巨匠と一般人の違い。
昨日BSで放送の『20世紀の名住宅』はご覧になりましたか?
フランク・ロイド・ライトが取り上げられていたので、今日は、ライトさんの建物探訪をお届けします。
こちら、ライトさんが晩年すごした、ウィスコンシン州・スプリンググリーンに建てた、彼の自邸です。
昨日放送のあった「落水荘」もそうでしたが、彼の建築は、「自然とともに、暮らす」そうで、邪魔な木なんかあっても、「伐っちゃえ!」じゃなく、うまいこと建物を回避させて、「ともに暮らす」んだそうです
彼の代表作のもうひとつに、シカゴのロビー邸があります。
実は、シカゴのロビー邸と、スプリンググリーンの自邸、大きな違いがあるんです。
それは、「窓」。
ロビー邸には、ほとんどの窓にステンドグラスが装飾されていますが、スプリンググリーンの自邸には、ステンドグラスが入っていません。
なぜかって?
彼のステンドグラスは、自然の草や花を幾何学的にデザインしたものです。住宅の中から自然を感じられるように、と。
都会の街中に建つロビー邸は、周りも住宅ばかり→自然を感じられない→窓にステンドグラス。
田舎にある自邸→まわりは見渡すかぎりの緑と湖→わざわざステンドグラスを入れる必要が、どこにある!
ってなことらしい。
このロビー邸、今では多くの建築ファンが訪れ、建築小僧たちがカメラやスケッチブック片手に、熱い視線を送る名住宅となっています。
しかし、ロビー邸の施主・ロビーさんは、この家がどうも気に入らんかった、らしい。2ヶ月ほど住んで、引っ越しちゃったとか。
けどあの「落水荘」については、施主は大変気に入って、生涯そこに通った(別荘として建てたので)とか。
しかしこの「落水荘」、施主の当初の希望は、「滝を眺めながら過ごせる家」が希望だった。なのに、ライトさんは、「滝の上(!)の家」をプランしたもんだから、施主からはクレームが。
「ライトさん、滝の上に家があったら、滝、見えへやん。わし、最初に、『滝がみえる家がいい』ゆうたやん。」(たぶん、こんな会話がされたはず。)
そこで、巨匠。
「『滝を眺めて暮らす』のではなく、『滝とともに暮らす』んです。そんなことをいうようでは、アナタはこの建築に値しない。」
なーんてことをゆうたそうです!
そのライトさんのウンチクにポォ~っとなった施主は、「すべてライトさんにおまかせします!」で、できたのがあの落水荘ですって。
「建築」という意味では、落水荘もロビー邸も、とても価値のある文化財となっていますが、住み手の明暗はクッキリ分れてしまっていますね。
アートとしての「ケンチク」は有名な先生方にお任せして、私は、住む人がこ心地良いおうちを造りたいなぁ。
なんて思いつつも、いつかカッチョイイ「ウンチク」を言って、お客さんを「ポォ~」っとさせてみたいわっ、と思う今日この頃。