ひだまり設計工房は、無垢の木や自然素材の家造りをしている、夫婦ふたりで営む、小さな設計施工会社です。

木の家に犬と猫、庭の木々と畑の野菜を手入れする日々を過ごしています。

季節ごとに移り変わる庭の木々の様子。杉の床や珪藻土の空間に、夏は涼しく冬は温かな住まい。庭で取れた野菜を食卓に並べて。自然からの小さなおすそ分けを日々感じる暮らしをしています。

春の訪れとともに一気に新芽が芽吹く里山の庭のよう
暖かくなってまず最初に咲くジューンベリーの花
春から夏にかけて暑くなるとともに赤くなるサクランボ
初夏の訪れとともにひっそりと開くエゴノキの小さな白い花
初収穫のベビーリーフ

 けれども。そうはいっても日常や仕事に追われる現状。優雅に丁寧な暮らしをできているわけではありません。
 自宅である「山暮らしの家」を設計するにあたって大切にしたことは、家事動線・日々の生活や趣味を考えた収納場所・収納量。

 見た目の美しさだけに拘らず、生活しやすい空間にし、設備についても新しい生活家電に頼れるところは、頼ることにしました。できあがった家は、日々の生活のストレスがなく、心地よい暮らしやすい住まいが実現しました。

 暮らし方はひとそれぞれ。こうしたいな、と思う「暮らし」も、ひとそれぞれ。私達は、住まう人それぞれの「暮らし」に寄り添った住まいづくりを目指しています。


 私自身、高校生のときに地元の神戸で阪神大震災を経験しました。そして社会人になって、東日本大震災を千葉で経験しました。
阪神大震災では、実家の住まいは全壊判定となり退居を余儀なくされましたが、親戚の一級建築士の先生に修繕していただき、引き続き住めるようになりました。そして、建築の仕事をするようになって経験した東日本大震災。建材や設備といった材料だけでなく、現場に行くこと自体、ガソリン不足や道路の液状化などで、あらゆるものが一時的に麻痺しました。
 昨今の「想定外」の自然災害。家を造ることを生業とし、そして自分自身も大きなローンを背負った今、感じることがあります。日々過ごす住まいだからこそ快適に心地よい空間であるべきだけれども、その経済的な負担が大きくなりすぎてはならない、ということ。お金があれば、予算があれば、あれもこれも、ステキなもの、便利なもの、大抵は実現します。けれども、「家を建てて一人前」なんて価値観は、なくなってきています。「子供も、孫も、受け継いで住み続けられる家を」という考え自体はとても素晴らしいものですが、「家」があることで、住む地域、職業、生活や人生が縛られてしまう場合も少なくありません。無理のない範囲で、その予算を最大限に活かすことが大切と思います。

 そして、自然素材の建材は、そこで過ごす人や動物にとって心地よいだけでなく、最後の最後、廃棄するときに地球に負荷が低い形で還っていきます。極端なことを言えば、誰も住まなくなって家が朽ちていくときに、全部土に還るような材料だけで家が造れたら良いのにな、なんて思います。(ただ、耐久性やコストの問題もあるので、現実的ではないですけどね)

 たとえば、我が家で使っている薪ストーブ。燃料は、現場で出た木材の端材を使っています。自宅の工事が始まったときに、薪ストーブを使うことは最初から決めていたので、薪の燃料として使える端材は全て取っておきました。我が家は外壁にも杉の無垢板を使ったので、だいたい8㎥ほどの端材が出ました。

来期に持ち越す分の薪
庭の片隅にある薪棚で小さな屋根だけの雨ざらしだけど
もともと建材として使用されている木材は乾燥が行き届いているので薪の燃料として雨ざらし保管でも
使用には問題ナシ

 初年度の今年、1月半ばから暮らし始めて、4月末頃まで薪ストーブは使っていました。残りが約2㎥ほどなので、平均すると約1㎥~1.5㎥ほど使っていたかと思います。薪ストーブがあれば、他の暖房機器は一切いりません。今年の冬、我が家の暖房による環境負荷は、ゼロ、なんです。なんて思うと、ちょっとうれしい。薪ストーブで出た灰は、畑の肥料として土に混ぜ込んで再利用。

自家菜園スペース
緑肥ミックスという雑草を育てつつ無農薬で栽培中

 ついでに言うと、この端材、現場のゴミとして「産業廃棄物」として処理するのが通常です。専門の業者さんに処分してもらうのですが、この8㎥ほどだと、約5~10万円は掛かります。その分のお金が、一切不要。地球にも、お財布にも、やさしい(笑)。

 もちろん、どんな家でも薪ストーブを設置できるわけではないですし、全ての方々にオススメできるものではないです。我が家の場合、家の周辺環境が郊外なので薪ストーブの煙等でご近所への影響は少ないこと、仕事的に燃料となるものが手に入りやすいこと、燃料となる薪のストックを置く場所がほどほどに確保できる敷地条件であったこと、で、好条件だったと思います。

 こんなふうに、家は、住む人や地域によって、何が良いのか異なってきます。住まい手一人ひとりの思いに寄り添った家造りを一つずつ、丁寧に、つくりあげていきたいと思っています。